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茶の無農薬・有機栽培

農産物に対する消費者の安全志向が高まり、農薬や化学肥料を使用しないか、または少なくした茶が求められています。さらに、生産面においても、生態系を維持、活用した生産技術の見直しが必要となってきています。

こうしたことから、チャの栽培農家の中にも、無農薬、有機栽培に取り組む農家が増えています。

チャの無農薬・有機栽培に関する研究は、これまで神奈川、滋賀、宮崎、佐賀、静岡県等の試験研究機関で取り組んでいます。

静岡県茶業試験場が1991~1994年に、榛原郡中川根町で現地試験を行った結果では、一番茶では、無農薬区は慣行防除、省農薬区と比べても、収量、品質に明かな差は認められませんでした。しかし、二番茶では無農薬区で収量の低下(2割程度減収)や品質の不安定がみられました。これは、毎年秋期の炭そ病多発による樹勢の低下や二番茶期のもち病、カンザワハダニの被害などが上げられます。無農薬栽培における炭そ病対策としては、二番茶摘採直後に浅刈り更新程度にせん枝を行うことにより無処理の場合に比べて炭そ病の発生を軽減することができます。チャの無農薬・有機栽培は、全国の例をみると山間地で取り組んでいる農家が多く見られます。これは、山間地で比較的標高が高く、周囲に山林があるような場所であれば、害虫の発生が平坦地に比べ比較的少ないことによると思われます。しかし、一方では病気が発生しやすく、多発する場所では、収量、品質の低下に影響するものと考えます。

そこで、無農薬栽培に取り組む場合は、せん枝等による耕種的防除や病気に強い品種の導入、天敵の利用などにより生産安定を図っていくことが望まれます。

なお、有機農産物の表示について、農林水産省では、1999年にJAS法(農林物資の規格及び品質表示の適正化に関する法律)の改正にともない、有機農産物及び有機農産加工食品のJAS規格を定め、検査を受けた結果これに合格し、有機JASマークを付けたものでなければ「有機栽培茶」等の表示をしてはならないことになります。これは、2001年4月から施行されることになります。

(参考文献)

1)後藤昇一・鈴木康孝・小林栄人(1995):山間地におけるチャの無農薬・有機栽培が病害虫 クモ類等の発生と収量、品質に及ぼす影響.静岡茶試研報,19,25~36.

2)後藤昇一・鈴木康孝・小林栄人(1996):無農薬栽培茶園における病害防除としてのせん枝 処理.静岡茶試研報,20,25~29.

(後藤 昇一)