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輸出品としてのお茶

茶は水に次いで世界中で最も飲まれている飲料です。そのため、茶の生産の無い地域は輸入に頼っています。北アフリカ、アラブ、中央アジアのような砂漠地帯では野菜が取れないために緑茶が貴重なビタミン補給源となっています。これらの地域では昔から中国産のガンパウダー(玉緑茶)か団茶(緑茶を固めた物)が飲まれています。現在でも中国は世界中で飲まれている緑茶の9割を輸出し、茶全体でも世界第2位(数量)、第3位(金額)の輸出国です。

欧米人がお茶を知ったのは17世紀になってからですが、 欧州大陸ではその後、ココア、コーヒーに押されて茶の需要は伸びませんでした。一方、イギリスやアメリカでは茶が消費を伸ばし、必需品となったために18世紀にはボストン茶会事件や19世紀には阿片戦争を引き起こすことになりました。19世紀後半になって漸く植民地における茶園経営が軌道に乗り始め、日本も鎖国を解き中国の独占状態が崩れました。

日本では明治時代に海外の需要に対応するため、牧の原が茶園として開拓され、輸出品として茶の生産が盛んになりました。輸出商品として日本で生産されていたのはガンパウダー(玉緑茶)、チュンミー、ソウミーという中国式の緑茶が主で、輸出港の近くの茶工場で中国人が仕上げの指導していました。また、イギリスが植民地インドから紅茶を輸出して世界市場のシェアを拡大していたので、日本でも紅茶の製造が行われていました。

第2時大戦前までは日本茶は国内消費向けと言うよりもアメリカ向け輸出商品として生産されていました。なんと、アメリカでは20世紀初頭は日本が茶供給国の第1位でした。戦争中の中断後、昭和30年代初めには日本から北アフリカ向けにガンパウダーが大量に輸出されましたが、高度経済成長を遂げた後、日本茶は国際的な価格競争力を失い、世界市場から消えていくことになりました。これ以後、日本茶の生産は輸出用ではなく自国消費向けに変わりました。一方、イギリスも植民地が次々と独立したために、国際市場に置ける支配力を失い、ついに1998年6月に有名なロンドン茶市場は閉鎖されました。

現在、主要な茶輸出地域は旧英植民地インド・スリランカ・ケニヤ他東アフリカ諸国及び本国イギリス、本家中国、次いで旧オランダ植民地インドネシア及び本国オランダ、新興勢力としてはドイツ、南米諸国です。また、オセアニアでも輸出向けに茶の栽培が施行錯誤されています。ドイツは英国やオランダと同様に茶の栽培はできませんが、デカフェ(茶からカフェインを除去します)と着香茶(フレーバードティ)を製造し、更に世界中の高級茶及びハーブの集積地としての機能を持っています。

90年代以降、世界的な健康ブームから有機栽培茶や緑茶の需要が増えています。95年に茶残留農薬のEU基準が東アジアの実情に合わないように決められてしまったため、国内向け生産が主体の日本茶は価格のみならず残留農薬の面からも輸出には向かない茶になってしまいました。一方、インドやスリランカの緑茶はEUでの残留農薬の問題が無く、更にカテキン含有量が多いので輸出量が増えています。中国は茶が輸出品として生産されていますので、2000年からEU基準を守れるような農薬使用方法に切り替えました。

近年、国際価格より一桁高価な日本茶の市場めがけて世界中の茶産地が煎茶の生産に注目しています。最近では世界各地で日本向けにだけではなく欧米市場向けにも煎茶の製造が増えています。

(谷本 宏太郎)

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