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食べるお茶の効果

お茶の葉は,お湯で入れた場合に溶け出してくる「水溶性成分」と溶け出さない「不溶性成分」からなる(表I参照)。水溶性成分にはカテキン,カフェイン,ビタミンC,テアニン,γ-アミノ酪酸(GABA,ギャバ)などが含まれ,それぞれヒトに対して様々な生理作用を示します。一方,不溶性成分のβ-カロチン(プロビタミンA),α-トコフェロール(ビタミンE),食物繊維などは比較的多く含まれているのも関わらず,「お茶」に溶け出ることはなく,茶殻として捨てられています。

歴史的に見ると,茶は必ずしも「飲む」だけではなく,食べられていた歴史があります。(中村羊一郎:「番茶と日本人」,吉川弘文堂,1998年)抹茶は粉にして飲み,唯一,茶葉成分全てを利用してきました。しかし,茶成分の機能性に関心が深まると共に,最近は,これらの優れた機能性(表1)を無駄なく利用しようとする機運が高まってきました。

Β-カロチンとα-トコフェロールはいずれも抗酸化性の脂溶性ビタミンで,体内に入るとそれぞれビタミンA(VA),ビタミンE(VE)の作用を示し,がん予防や老化抑制因子としても知られています。食物繊維は便秘を予防(整腸作用)し,また,大腸がん予防因子ともなるといわれています。VEはナッツや植物油に多く含まれ,これらからの摂取は高カロリーを伴いますが,茶葉から摂れば低カロリーでー石二鳥といえます。

茶葉を1~2mm程度の粉にして食べることにより,これらの不溶性成分が体内で利用されることが実験的にも確かめられつつあります。ちなみに,上級煎茶の粉茶を1日6g食べると,日本人のVA所要量の約1/2,VE所要量の約半分を取ることができるといいます。(桑野和民:「緑茶・食べる飲む」,NHK出版1993年)

更に,緑茶の風味や香り,色,栄養分としての利用だけでなく,消臭効果,抗酸化性などを食品加工へ利用し,家畜飼料に添加して食肉や鶏卵の品質向上を目指す試みもあります。また,緑茶を食材として料理に積極的に利用し,その普及をはかるため各地に研究会ができています。お茶料理研究会(代表,大森正司大妻女子大教授)はその代表的なものです。食べるためのお茶は,そのために加工された商品がいくつか市販されています。また,緑茶から粉茶を家庭で作るには,小型の粉末化装置が市販されています。

(中村 好志)

緑茶成分とその機能 (画像をクリックしてください)