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ふうしゅん ─ 耐寒性が強い晩生品種 ─

栽培上の特性

挿し木発根性は良く、定植後の活着、初期生育も優れています。樹勢、耐寒性が強く、栽培形質は良好です。耐病性は、炭そ病、輪斑病には「やぶきた」より強いですが、育成地の金谷では、挿し床や幼木期に赤焼病の発生が見られたので注意が必要です。樹姿は直立型ですから、幼木期の仕立ては「やぶきた」に準じて行って下さい。

製茶特性

「やぶきた」より萌芽期で七日、摘採期で五日遅い晩生です。
一番茶の芽の伸び、芽揃いは良好です。収量は、育成地での試験では、一番茶、二番茶、三番茶とも「やぶきた」の一・五倍を超え、かなり多収です。一番茶品質は、新芽の色が少し濃いため、色沢が黒みを帯び、やや劣ります。香気、水色、滋味は大きな欠点がなく良好です。二番茶、三番茶とも品質は良好です。

加工上の注意点

色沢がやや黒くなるので、少し深蒸しにするなど工夫が必要です。

普及および栽培適地

「ふうしゅん」は「さえみどり」と育成された年次がほぼ同じで、いわば同期生になります。線が細く、欠点はあっても華がある「さえみどり」が早生の主要品種として成長したのに比べると、大きな差がついてしまいました。しかし、育成中の成績は優良で、決して劣等生ではありません。晩生ですから、晩霜害の心配は少なく、土壌を選ばず、全国各地の試験成績は安定していてばらつきが少なく、広い地域に適応できる品種です。特に、耐寒性はこれまでの品種の中で最も強いです。三重県茶業センター南勢試験地での試験では、樹勢が強い「めいりょく」などと比べても格段に良い生育を示しました。宮崎県五ヶ瀬町は、南国とはいえスキー場があるようなところですが、そこでの現地試験でも、寒害、裂傷型凍害ともほとんど発生せず、生育も旺盛でした。寒害が多発する地域では、最後の砦として試してみることをおすすめします。

月刊「茶」(社団法人静岡県茶業会議所)より転載

(池田奈実子)