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礼儀作法と茶道

茶道という言葉を聞くと面倒臭い礼儀作法があって恥をかかないように気をつけなければ行けないとか、正座で足がしびれるといったイメージを思い浮かべる人もいるかも知れません。しかし茶道における礼儀作法は単なる行動規範などではありません。美しく立ち振る舞うことで、茶席における和敬清寂の雰囲気をつくるとともに、相手への思いやりを示し、主客が一服のお茶を通してお互いに心を通わせるための環境をつくる意味をもっています。

日本に抹茶の喫茶法がもたらされてまもなく、宋の『禅苑清規(ぜんえんしんぎ)』にならって禅宗僧侶の日常生活の行儀を示した『永平清規(えいへいしんぎ)』には茶礼が規定され、それ以後ながく禅寺での茶の形態として引き継がれました。やがて南北朝時代から室町時代にかけては、中国から輸入された掛け軸や花瓶、香炉といった唐物の飾り付けをした会所と呼ばれる部屋での喫茶形態が見られるようになりました。そして15世紀に村田珠光によって創案された侘び茶のスタイルは武野紹鴎へとひき継がれ、さらに千利休によって大成されました。この侘び茶が体系化されていくなかで茶の湯の作法ができあがっていきました。現在茶道の各流派の作法はこうしてできあがった作法を引き継ぎ、さらに発展させてかたちづくられました。

こうした茶道の礼儀作法やその考え方は、茶席の場だけのことにとどまらず、私たちの日常生活においてどのように振る舞うべきか示しており、社会生活を円滑にしてくれます。それゆえ茶道は何百年ものあいだ人々に受け継がれてきているのです。

(望月 伸嘉)