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普茶料理は江戸時代の初期、日本にもたらされた中国風の精進料理です。この料理は、京都宇治に黄蘗(おうばく)山万福寺を開山した隠元禅師が招来したといわれています。当時は、長崎や宇治の禅寺を中心に食され、「黄蘗料理」とも呼ばれていました。
普茶料理の主な特徴を二つあげると、第一に多量の植物油と葛(くず)を使うことです。油が上手に使ってあるため、日本の精進料理のように淡白な味ではなく、現代人にも好まれるような精進料理といえます。第二の特徴は、四人が一つの長方形の卓に向かい合って座り食事をすることです(図.1)。
当時の日本の食事は、多くの場合、各自に膳が配られるのが普通でした。そのため、この様な食事スタイルは、現代のものと共通する面があります。
献立は、本来黄蘗山などでは、二汁六菜を基本とします。料理の前には、まず煎茶が出されます(図.2)。そして小皿または丼に盛られる小菜類、大皿に盛られる大菜類が順に運ばれ、それを銘々が取り皿に取り回して食事は進んで行きます。
料理には、有名な麻腐(まふ:胡麻豆腐)をはじめ、雲片(うんぺん:油で炒めた野菜の葛煮)、笋羮(しゅんかん:野菜の炊き合わせ)などがあります。これらの料理は、野菜を中心としたもので、季節の素材が使われます。
(参考文献)
奥村彪生編(1985)「普茶料理妙」,『日本料理秘伝集成 第13巻 異国風料理』,91-168.同朋社出版
日本風俗史学会編(1996)『図説江戸時代食生活事典』.雄山閣出版
平野雅昭(1982)『日本料理探求全書 第3巻 日本料理考』,259-267.東京書房社
同 編(1985)「江戸流行料理通 四編 全」,『日本料理秘伝集成 第6巻 日本料理秘伝Ⅵ』,177-229.同朋社出版
渡辺実(1964)『日本食生活史』、259-261.吉川弘文館
図.1 普茶料理の食事スタイル
(長方形の宅に向かい合って食べるのが基本)
奥村編(1985)「普茶料理抄」『日本料理秘伝集成第13巻異国風料理』同朋社出版より
図.2 料理前に出る煎茶飲用の様子
奥村編(1985)「普茶料理抄」『日本料理秘伝集成第13巻異国風料理』同朋社出版より
(坪内 淳仁)
上(図.1):普茶料理の食事スタイル/下(図.2):料理前に出る煎茶飲用の様子