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なぜイギリス人は紅茶好き?

イギリスが紅茶の国といわれるようになったのには、この国の水質や食生活のあり方が大きく関わっていると思われます。

まず水の問題です。日本の水と違いイギリスでは硬水を使っています。硬水でいれるとお茶の香りや味がしっかり出でません。とくに不発酵の緑茶や半発酵のウーロン茶だときちんと抽出されにくい。しかし完全発酵茶である紅茶の場合、透明感がなく濃い色になってしまいますが、大変まろやかでコクのある味になります。苦味は出ずに、しかも乳業国自慢のミルクを入れるとコクがあるとてもおいしいミルクティーになります。

さてイギリスの土壌は野菜や果物を作る農業にむいていず、その代わりに酪農が盛んになりました。このためミルクやクリームを使ったメニューが多く、食材としても畜産品が多い使われています。ヨーロッパ大陸の他の国と違って、脂質の多い食生活が中心といえます。この脂肪を洗い流してくれるのが紅茶--大陸でワインを製造する国は、この役割をワインのポリフェノールが担っているのかなと思われます。

そんな食材やメニューに健康面でも一番相性がよいのが紅茶であり、また味覚的にもフィットしています。とくにイギリスのミルクはおいしく、脂肪分が同じでもうらやましいほどクリーミーで甘い香りがしてとても紅茶といいパートナーとなります。

年中気温がさほど高くならず寒い冬をすごすためには脂質をとることが必要だったイギリス。紅茶は体を温める効果もあり、この国にはぴったりの飲み物でしょう。イギリスでもっとも相性がいい紅茶とスコーンとクロテッドクリームの組み合わせのメニューを“クリームティー”と呼んで親しまれてきたのも、そんな背景があったのでしょう。

しかし最近では少しずつイギリスの中でもお茶に対する考えが変わってきています。ミルクティーからストレートティー、紅茶から健康によい緑茶や中国茶へと興味が移ってきています。少し寂しいように思います。

(松宮 美恵)

テームズ川の川岸のカントリーホテルのティールーム(川を眺めながらティータイム)