ホーム > お茶百科事典 > 日本のお茶 > お茶漬けの意味・由来・歴史

ここから本文です。

喫茶文化の紹介

お茶漬けの意味・由来・歴史

日本人はお茶漬けが大好き。梅干しやタクアン、それに海苔を載せたご飯に熱いお茶をかけてザブザブとかきこむ、というのが標準的なスタイルです。でも全国のお茶漬けを調べてみると、漬物はもちろんですが、トビウオ、カツオ、カマス、サバ、サケ、タイなどの魚をはじめ、いろんなものを載せています。静岡県では愛鷹山麓の浮島沼周辺で江戸時代からウナギの蒲焼を載せたウナ茶が名物になっていました。 それでは、お茶漬けの起源はどこにあるのでしょうか。平安時代、冷えたご飯にお湯をかけて食べる、湯漬けというものがありました。これは室町時代の正式な宴会にも出てきます。だから、お茶漬けは、この湯漬けの白湯(さゆ)のかわりにお茶を使ったに違いない、と思うでしょう。でも、これほどいろんな物をのせる茶漬けがあるということは、むしろ、お茶にさまざまな具やお米を混ぜて煮る、という食べ物があって、それのインスタント版としてお茶漬けがうまれたのではないかと、考えることもできそうです。 江戸時代初期のレシピ集である『料理物語』に、「奈良茶」というのが出ていますが、これなど、栗や芋などを米と一緒にお茶で煮込んだ、雑炊のようなものでした。中国の古い書物にはお茶にいろんな具を入れている様子がでていますし、現代中国の少数民族のあいだにも、お茶を使った食べ物が作られています。  これらから考えると、お茶は飲むだけのものではなく、比較的軽めの食べ物を作るときのベースとして使われていた可能性が高いと思われます。日本人のお茶漬け好きは、意外に古い茶利用の伝統を今に伝えるものかもしれません。

(中村 羊一郎)

茶粥

茶粥(和歌山県熊野地方)

参考文献および写真提供:旧金谷町お茶の郷博物館