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喫茶文化の紹介

結婚とお茶

九州各地ではお茶屋さんで結納のセットを売っています。なぜ、お茶屋さんで売っているのかというと、結納品の中心がお茶だからで、結納を交わすことを、茶を入れるとか、たんにオチャといっています。豪華な水引細工の中央には、俵のように茶缶が積んであったり、金色に輝く茶壺を置くなど、地域によってすこし差はありますが、結納品の目録には「御知家」などと記されます。

なぜお茶が結納の席の主役になるのでしょうか。それは茶の木は植え替えがしにくい、つまり嫁入り先にしっかり根づくように、という意味だと説明されています。ところがおもしろいことに、中身のお茶はあまり上等ではありません。いいお茶はよく出る、というではありませんか。結婚に「出る」という言葉はタブーだからです。

でも、こんな語呂合わせみたいなことがお茶と婚姻との関係を作ったのでしょうか。
このお茶一口知識の別の欄を見てください。お茶と食べ物とが深い関係があることが説明されています。別に男女の役割分担説を強化するわけではありませんが、古くは家の火を管理し、男たちに食べ物を作って食べさせるのは女性の仕事、いや、権利でした。自家製のお茶は飲むだけでなく、茶粥などの調理のベースに使われていたことを考えると、お茶は食事の核となる重要な食品であり、さらに言えば主婦の権利の象徴でもあります。つまり、結納にあたって、男方から女方にお茶が贈られる、しかもそれが日常的な安いお茶なのは、我が家の主婦になってほしいということの表れであると解釈できます。お茶と女性との関係は、こうした深い背景をもっているのです。

(中村 羊一郎)

結納茶

結納茶(佐賀県佐賀市)

茶袋

茶袋

花女郎茶

花女郎茶(神奈川県)

結納茶

結納茶(九州)

宮崎市内の結納セット

宮崎市内の結納セット

結納セットはお茶屋さんで売っている

結納セットはお茶屋さんで売っている(宮崎市内)

参考文献および写真提供:旧金谷町お茶の郷博物館