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トルコの茶

トルコは日本以上の茶の生産国であり消費国ですが、その歴史は浅く、まだ50年足らずです。黒海に面したリゼ地方に紅茶のプランテーションが出来たのは1938年。本格的に紅茶工場が稼動し始めたのは1947年のことです。

それまでは、有名なトルココーヒーやハーブティーが飲まれていました。1950年代に入ってから大々的に紅茶の生産がはじまり、瞬く間に国内の需要を全てまかなうまでになりました。そして、現在のように国の隅々まで茶(トルコではチャイと呼ばれる)が飲まれるようになったのは1970年代ごろからといわれます。

現在では完全にコーヒーにとって替わって、紅茶が国民的な飲み物になっています。理由は、緊縮体制のためコーヒーの輸入を全面的に禁止した期間があり、それにより味覚が茶に変わってしまったこと、一方で国内の紅茶生産が軌道に乗り安価な紅茶が手に入るようになったことがあげられます。

トルコには、チャイハネという喫茶店があり、そこではチューリップの花形をした小型のコップで紅茶を飲みながらトランプをしたり、語り合うなど庶民の憩いの場となっています。トルコではチャイダンルックという二段重ねの独特のやかんを使って紅茶を沸かします。まず下の大きなやかんでお湯を沸かし、上のやかんに茶葉とお湯を入れ、重ねてコンロやストーブの上に置いておきます。こうすることでいつでも熱い紅茶を飲むことが出来るのです。

生産される紅茶は大部分国内で消費されます。水色は暗色で香りは穏やか、ロシアのお茶に似ています。トルコでは角砂糖を入れた甘い紅茶が好まれ、ミルクやレモンは入れません。茶園面積は日本の1.4倍、生産量は1.3倍、一人当たりの消費量は約2倍。どこに行ってもお茶が出てきます。

(参考文献)
Proceedings of TEATECH 1993 (India) 96-102

(小泊 重洋)