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機器による品質鑑定(近赤外法)

一般にお茶の品質は、五感による官能検査で評価されます。しかし、熟練した審査員であっても五感による審査ですから、その日の体調に影響されたり、五感の疲労などもあって、いつも一定の基準で客観的に審査できるとは限りません。

最近、近赤外光と呼ばれる赤外線領域の波長(800~2500nm)をお茶に照射し、反射してくる光の量や吸収された光の量の比率から、お茶の成分を推定したり、品質を判定する近赤外法が実用化されました。この測定原理は近赤外領域の光の吸収が成分の種類やその含有量と密接な関係があることを利用しています。近赤外法は、人体や環境に無害であること、迅速でしかも女性や未経験者でも簡単に測定できるという特徴があります。現在、この方法で測定できる項目は水分、繊維、全窒素、カフェイン、タンニン(カテキン類)、アミノ酸、テアニン(アミノ酸の一種で茶に特有の成分)、ビタミンCの8種類です。各種成分の含有量からお茶の品質そのものを推定することも可能です。近赤外法は生産者や茶商、指導機関など多くの場面で、原料の評価、荒茶、仕上げ茶の成分分析と品質評価を目的に利用されています。

この他にも機器を利用した茶の品質評価の研究は盛んに行われています。お茶の形状は画像解析装置、色は色差計、香気はガスクロマトグラフィー(GC)による香気成分の分析、滋味は液体クロマトグラフィー(HPLC)による呈味成分の分析などが代表的なものです。これらの方法は、測定に長時間を要したり、分析に専門的な技術を必要とし、結果の解釈にも高い専門知識が必要となり、未だに研究の域を出ていません。しかし、人間の舌や鼻と遜色ないほどに微妙な違いを感じ取る機器分析法や品質を総合的に判定する評価方法の開発もそう遠くないでしょう。

(後藤 正)

近赤外法による茶の成分分析