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荒茶

煎茶の製造工程は、荒茶製造工程と再製工程の二つの工程に大別できます。荒茶製造工程は茶葉を乾燥しながら成形操作を繰り返して煎茶特有の針のような細長い形状にする工程で、再製工程は荒茶の商品性を高めて市販する茶に仕上げる工程です。荒茶は生産者から茶問屋などへは流通しますが、一般消費者が手にすることはほとんどありません。通常は再製工程を経た仕上げ茶として市販されます。

荒茶の製造は、1)蒸熱→2)粗揉→3)揉捻→4)中揉→5)精揉→6)乾燥という各工程があり、それぞれの工程ごとに専用の製茶機械を用います。各工程は以下のとおりです。

蒸熱工程

蒸熱は生葉の中にある酸化酵素を不活性化させることが第一の目的です。その他に、生葉特有の青臭を除く、緑茶固有の香味を発生させる、茶葉の柔軟性を増して製造工程の操作を容易にすることなども目的としています。低圧の豊富な飽和蒸気を使用し、茶葉とよく接触させ、むらなく蒸熱してから速やかに冷却します。蒸熱時間は普通蒸しで30~45秒程度、深蒸しでは1~2分程度行います。

粗揉工程

粗揉工程は、茶葉を揉み手と葉ざらいで攪拌、揉圧しながら、熱風で茶葉を乾燥させる工程です。この工程では茶温を適温(35℃前後)に保持することが効率的な乾燥と製茶品質のために重要となります。所要時間は45分程度です。

揉捻工程

揉捻は、粗揉機から出した茶葉の揉み不足を補い、茶葉各部分の水分を均一にするために、加圧しながら揉む工程です。この工程は他の工程と異なり加熱はしません。所要時間は20分程度です。

中揉工程

中揉工程は茶葉に熱風を当てて乾燥させながら、回転する中揉胴と揉み手の作用により攪拌、揉圧する工程で、茶葉は次第によれて細長くなります。所要時間は40分程度です。

精揉工程

精揉は茶葉の内部水分を揉乾し、緑茶特有の針状の細長い形状にするために行う操作です。機械下部の釜を熱して乾燥させながら、茶葉を上から重りを加えてよりこみます。重りは茶葉のしとり程度を観察しながら徐々に加重を増し、乾燥するに伴って加重を軽くします。加重の仕方は茶の形状に影響するほか、色沢、香気、滋味にも関係するため重要な操作となります。最も熟練技術を要する工程ですが、最近では自動制御機械も普及してきています。所要時間は40分程度です。

乾燥工程

精揉機から取り出した茶はまだ水分を含んでいるため、長期間の保存に適しません。そのため、約80度の熱風で含水率が5%程度になるまで乾燥させます。所要時間は30分程度です。乾燥工程が終了した茶を荒茶といいます。

摘採された茶葉はすぐに荒茶工場に運ばれ、できるだけ速やかに蒸熱処理されます。そのため、ほとんどの荒茶工場は茶園の近くに建てられています。荒茶工場の多くは農家が運営し、その形態は個人と共同がありますが、最近では荒茶製造の効率化などを目的とした近代的な大型共同工場が増加してきています。

(参考文献)

静岡県農政部,茶生産指導指針 (1994)

静岡県お茶振興室,しずおかのお茶 (1999)

(大石 哲也)

上:煎茶の製造工程(画像をクリックしてください)