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抗酸化作用

ヒトをはじめ地球上の生物の多くは生命を維持する上で酸素を必要としていますが、その利用過程において通常の酸素よりも反応性に富む酸素やその関連物質が産生される場合があります。これらは活性酸素やフリーラジカルとよばれ、 生体成分(脂質、たんぱく質、核酸など)の異常な酸化を引き起こし、その機能を低下させたり、細胞の死をもたらしたりします。

活性酸素は、体内に侵入してきた細菌やウィルスを殺し、生体防御の有用な役目もはたしますが、異物のみを攻撃対照とするような特異性がないことから、これが多量に産生された場合や、生じた活性酸素の消去機構が十分に行われない場合、正常な細胞や生体成分まで攻撃され、癌をはじめ様々な病気の発症や病状を悪化させる原因となります。 

一方、 私たちの体は活性酸素やフリーラジカルの発生を抑えたり、 消去を行なったりするための物質が存在し、異常な酸化による生体組織の障害を阻止しています。それらの物質を抗酸化物質といい、その酸化抑制反応を抗酸化作用といいます。例えば、 ビタミンCやビタミンE、 β一カロチンなどは血液や臓器の重要な抗酸化ビタミンであり、また植物には、フラボノイドとよばれる強い抗酸化作用を示す多くのポリフェノールが存在します。私たち人間はそれら抗酸化物質の多くを食品から摂取する必要があります。 

茶に含まれるフラボノイドはカテキン(類)と総称され、その総含量は茶乾燥葉重量の10-15%にもなります。特にその中でエピガロカテキンガレート(EGCg)といわれるカテキンはその含量が最も多く、野菜類にはほとんど含まれない茶に特有な物質です(図1)。このEGCgの抗酸化作用は現在知られている植物ポリフェノールの中でも、最も強い活性を示す部類に入ります。

また、緑茶には、カテキン類以外の抗酸化成分として、ビタミン類(VC、VE、カロテノイド)、アミノ酸類(ヒスチジン、メチオニン、チロシンなど)、微量金属類(セレン、亜鉛など)を茶葉は豊富に含んでいます。図2は緑茶(煎茶)中の抗酸化ビタミン量を他の食品と比較したものです。

VC、 VEやβ-カロチンの量は、ホウレン草やニンジン、キャベツなどに比較しても高いことがわかります。 ただし、VEやβ-カロチンのような脂溶性の抗酸化物質は、熱湯ではほとんど溶出されないので、これらの脂溶性抗酸化物質を摂取するには、煎茶としてでなく、抹茶として利用する必要があります。またこれらの抗酸化ビタミン類は緑茶に最も多く含まれ、ウーロン茶、さらには紅茶と発酵度が増すに従いその量は減少します。このように緑茶は抗酸化物質の宝庫といえるでしょう。

(参考文献)

  1. 佐野満昭 富田 勲; 茶の抗酸化性,フ-ドケミカル,9, 24-31(1993).
  2. Rice-Evans C., et al.: Structure antioxidant activity relationships offlavonoids andphenolicacids,FreeRad.Biol.Med.,20,933-956 (1996).

(佐野 満昭)

上/主な茶カテキンと含量比 下/食品100g中に含まれる抗酸化ビタミン量の比較 (画像をクリックしてください)