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薬は茶で飲まない?

昔から薬はお茶で飲むとよくないと云われてきました。お茶には、興奮性のカフェインが含まれますので、それが例えば、睡眠薬の効果を相殺するからです。

茶では、特に貧血の治療のための鉄を含む薬の服用にあたっては、お茶で飲むことが禁じられてきました。また鉄剤を服用したあと、少なくとも30~60分は茶の飲用を控えた方が良いとされてきました。

その理由の一つに、お茶には多量のカテキン(タンニンとも云い、煎茶の場合、通常の入れ方で60~70mg/100ml含まれる)が、鉄とキレート(複合コンプレックス)をつくり、鉄の吸収を妨げるからであると説明されてきました。
しかし、緑茶にはビタミンCが含まれ、それは鉄の吸収を促進します。(表1参照)

近年、鉄剤は徐放剤が繁用されており、お茶は一過性で、直ちにすべての鉄がカテキンと反応する訳でもなく、お茶で飲むことが禁じられなければならない程のことではないと考えられるようになってきました。ただ、鉄欠乏性貧血の患者では、消化管粘膜の萎縮と、消化液分泌の低下が認められることが多く、このような場合、鉄の吸収率も低下していますので、お茶による飲用はさけた方がよいと思われます。

最近、薬を服用する際、グレープフルーツジュースの飲用が問題となっています。これはグレープフルーツジュースの中のフラボノイドが、肝臓の薬物代謝酵素、チトクロームP-450系の分子種の一つCYP3A4の活性を阻害し、結果的に投与された薬の代謝を妨げるからです。

例えば、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬の場合、その代謝を妨げ、血中濃度を高め、拡張期血圧の低下などの副作用を誘発することがあると云われています。茶においては、逆にCYP1、CYP4の選択的誘導作用があるといわれています(Bu-Abbar etal.,Carcinogenesis 15,2527,1994)が、特に副作用が生じたというの報告はありません。

(富田 勲)

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