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藤かおり ─ ジャスミン様の芳香、藤枝で産地ブランド化 ─

品種の特徴

「藤かおり」は藤枝市の森薗市二と小柳三義両氏により、「静印雑一三一」と「やぶきた」の交雑実生から選抜育成され、平成8年に種苗法による品種登録がされたものです。
「藤かおり」は「やぶきた」より二~三日早いやや早生種で、樹姿は開帳型、樹勢の極めて強いものです。成葉は片親の「静印雑一三一」に似て、先端長が短く、長卵形で、葉色は濃緑です。摘採期の茶芽は大きく、百芽重の大きなものです。収量性は「やぶきた」並で、耐寒性の裂傷型凍害には弱く、耐病性の炭そ病や輪斑病には強いものの、赤焼病には極弱のものです。

品質特性

製茶品質として、外観は「やぶきた」より肉太で、やや黒みを帯びた濃緑色となります。また香気は極めて高く、ジャスミン様の芳香があります。滋味は、濃厚でこく味もありますが、苦渋味も少なからず残ります。また、化学成分的にも、アミノ酸・カフェイン・カテキン含量とも多く、インパクトの強い味となります。

栽培上の注意点

樹勢は極めて旺盛ですが、定植直後には主幹から分枝する枝数が少なく、枝張りが粗となりやすいため、幼木期の仕立てに注意する必要があります。また、赤焼病や裂傷型凍害にも弱く、防寒はもちろんのこと、防風対策や防除にも注意が必要です。

加工上の注意点

「藤かおり」は「静印雑一三一」を片親としているため、濃厚で特徴的な香味をもち、商品化を意識した荒茶製造を心掛ける必要があります。また、葉肉が厚く、黒みを帯びやすく、苦渋味も出やすくなりますが、蒸しを十分に行うことで、若干の改善は可能です。

普及および栽培適地

「藤かおり」は枝の市役所・茶商・農協・生産者が一体となり、藤枝茶振興協議会を形成し、毎年二万本の育苗から生産・商品開発までに取り組んでいるものです。そのため、藤枝市を中心に普及が進められますが、適地としては耐寒性が弱いため、温暖地域で凍霜害の少ない地帯が栽培に適します。

月刊「茶」(社団法人静岡県茶業会議所)より転載

(中村順行)