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茶席のことば

茶会の客は茶席に入ったら先ず最初に床を拝見いたします。床には掛物が掛けられ、茶会の趣旨に添った飾付けが行われます。茶の湯道具では、「掛物ほど第一の道具はなし」(南坊録)といわれてきました。掛物には、絵や書、歌切、墨跡などがありますが、中でもとりわけ「墨跡を第一」とします。墨跡とは禅僧の揮豪した書を言い、他のものは書跡と呼んで区別をしています。

茶の湯の祖と云われる村田珠光が、参禅の師であった一休禅師から授かった園悟克勤の偈を軸にして度々茶会を開いたことが知られています。古くは、遺偈や法語、印可状などが表装されて掛けられていましたが、茶の湯の流行とともに「大徳寺物」と呼ばれる「一行物」がよく掛けられるようになりました。

一行物とは、「臨済録」や「碧巌録」といった禅僧の語録や、経典、詩文などから数文字の言葉を選んで揮豪されたもので、竪一行、あるいは横一行に書かれ、軸物に仕立てられることから、こう呼ばれます。

茶席には、その日の茶会の趣向や、亭主の心情に添った最もふさわしい物が選んで掛けられます。もとより一行物に書かれた言葉の多くは禅語ですから、その言の究極は仏法の奥義です。これは言葉を尽くしても説明できるものではありません。そこで、茶席ではもっぱら軸の出自や言葉の由来などが話題となります。また、禅語の本来は季節を問わないものですが、近頃は文字面から季節に合ったものを選んで掛けることが多いようです。たとえば、「花」の文字の入っている言葉は春、「月」は秋、「清流」などは夏に用いられています。

よく目にする言葉。

 無     (む)            出典:無門関 第一則

 不識    (ふしき)          出典:碧巌録 第一則

 忘筌    (ぼうせん)         出典:荘子外物篇

 喫茶去   (きっさこ)         出典:五灯会元 趙州章

 無一物   (むいちもつ)        出典:六祖壇経

 放下著   (ほうげじゃく)       出典:五家正宗賛趙州章

 一期一会  (いちごいちえ)       出典:不明(茶道一会集)

 色即是空  (しきそくぜくう)      出典:般若心経

 拈花微笑  (ねんげみしょう)      出典:無門関 第六則

 照顧脚下  (しょうこきゃっか)     出典:徹心録

 日日是好日 (にちにちこれこうじつ)   出典:碧巌録 第六則

 直心是道場 (じきしんこれどうじょう)  出典:維摩経 菩薩品

 薫風自南来 (くんぷうみなみよりきたる) 出典:東坡詩集

 平常心是道 (へいじょうしんこれどう)  出典:無門関 第19則

 無事是貴人 (ぶじこれきにん)      出典:臨済録

(参考文献)

茶席の禅語 西部文淨著 昭和45年 書林其中堂

(小野 はやを)

茶席の床:客は席入りをしたら先ず床を拝見する。床には掛物が掛けられる。