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日本茶編

家庭でできる手作り新茶

その昔、製茶機械のなかった頃は、お茶は全て手作りだった。最も原始的なお茶は、茶の樹を枝ごと切り取り、茹でて乾燥した葉を、ホウロクで炒って、焙じ茶風のお茶を作り、熱湯で煎じて飲むものだ。このようなお茶は今でも全国各地で細々と作られており、地域独特の番茶として飲まれている。お茶を作るのは考え方によっては簡単なのである。

私達が飲む最近の煎茶は、全て製茶工場で作られる。最新式の製茶工場にはコンピュータ制御の機械が並んでおり、複雑な工程を経てお茶が作られている。お茶どころ静岡でも、お茶は製茶工場でないと作ることができないと思っている人が多い。

しかし、お茶は誰でも簡単に作ることができるのである。

そこで、今回は、家庭で簡単にできるホットプレートで作る釜炒り風煎茶の作り方を紹介しよう。

用意するものは、茶の新芽とホットプレートと箸、火傷防止のための軍手もあったほうがよい。

茶の新芽の量は、ホットプレートの大きさにもよるが、100~200グラムが1回分の目安だ。新芽は近くの茶農家から分けてもらおう。茶の新芽はいつでも摘めるわけではないので、農家の摘み取り時期にあわせる気遣いが必要だ。自宅の庭に茶の樹を1、2本植えておくのもよいだろう。上手に育てれば、植えてから数年で1本1キログラムくらいの新芽が摘めるようになる。

茶の新芽について少し解説しよう。摘み頃の新芽には普通5枚程度の新葉が付いている。新芽の基となる茶の芽は冬に形成される。春になると芽が生長して次々に葉を開いていくが、1本の新芽につく新葉の数は5枚程度と決まっている。1本の新芽に10枚も20枚も葉が次々に開くわけではない。一番茶を例にとると、3月下旬に芽が膨らみ始め、4月はじめ頃から5日に1枚程度の速度で順々に新葉が開き、5枚程度開いてしまうと、新芽(葉)は生長から成熟に移る。新芽の摘み取りは大部分の新芽が生長から成熟に移ろうとする頃に行う。この頃が新芽(葉)が軟らかくしかもおいしさの成分が新芽(葉)に移った時期であるからだ。摘み取り時期が遅くなると新芽(葉)は成熟して硬くなり、おいしい新茶が作りにくくなる。硬くなった芽(葉)ばかり集めて製茶すると番茶のようなお茶になる。

このような理由から、使う新芽(葉)は、農家が摘み取る時期のもの使うようにしよう。一番茶の時期なら4月下旬~5月上旬、二番茶の時期なら6月中旬頃が目安だ。栽培の方法にもよるが、9月下旬頃にもやわらかな新芽が摘める。最近ではこの頃の新芽を丁寧に摘み取って、「秋摘み新茶」などといって商品化しているところもある。

摘み取った新芽は、ビニール袋に入れ、冷蔵庫で保存すれば、数日間は大丈夫。ただし、ビニール袋のぎっしり詰め込むと、蒸れて傷むので、ふんわり入れたくらいで保存するのがよい。摘み取った新芽を薄く広げて日陰(室内)に半日ほど置いておくと、やや萎れた状態(萎凋という)となり、花のような香りができてくる。煎茶のようなお茶を作りたいときには、摘み取った新芽をできるだけ早く製茶する方がいいが、香りも楽しみたい時には少し萎凋させた方がいい。

やわらかな新芽
摘み取った新芽

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